最近は「ライター」というと、「ウェブ記事のライター」のことを思い浮かべる方が多いかもしれません。
いまや多くの人がデジタルデバイスを持ち、情報発信も情報取集も、ネットで気軽にできるようになりました。
在宅ワークも一般的になり、ウェブ記事執筆の募集案件も増え、ライターと名乗る人は増えていると感じます。
一方で、誰でもチラシやパンフレットを簡単に作れるサービスが浸透したことにより、「ライティングやデザインは自分でなんとかできる」状態ですし、オウンドメディアやSNSが存在することで、誰でも自分の力で宣伝や告知、発信することも十分可能になりました。
そう、プロのライターの力を借りるような機会は、減ってきているとも言えます。
ウェブ記事以外はライターの出番なし、か…… そんな印象があるかもしれません。
しかし、逆に「書くこと全般」を見渡してみると、ライターの仕事は案外、裾野が広いのです。
(そして実は、そういった案件ができるライターさんがいま少ない、とも言われている)
あらためて、ライターの可能性と実際を知っていただきたく、わたしの20年ほどの経験と業務内容をベースに「ライターには実際どんな仕事があるのか?」について解説してみますね。
そもそもウェブ記事以外にどんな仕事依頼があるの?
大きく「制作系」「校正・校閲系」「セミナー系」「ブレスト系」「コンサル系」に分けられます。
(あくまでもわたしの経験の範囲ですので、これ以外もあるかもしれませんが)
もっとざっくり言うと、こんなくくりです。
■実際に書く仕事=「制作系」「校正・校閲系」
■話す仕事=「セミナー系」
■相談にのる仕事=「ブレスト系」「コンサル系」
クライアントさまは、公的機関や企業、学校、任意団体(NPO、市民団体、町内会、PTAなど)、個人事業主、フリーランス、個人など、さまざまです。
この記事では、実際に手を動かして書くタイプの業務である、「制作系」「校正・校閲系」について説明していきますね。
制作系
●新聞広告や雑誌掲載広告
●イベント、キャンペーンポスター
●電車内に掲示される広告
不特定多数の目に触れるメディアのもの、公共の場に掲示されるものの文章制作(キャッチコピー、ボディコピー/ブランドタグライン、ブランドステートメントなどと呼ばれるもの)などですね。
番外編として、会社勤務していたときには、「テレビCMの絵コンテ(コマ割り、シナリオ、セリフまで)」作成というのもありました。
●チラシ/フライヤー
●パンフレット/リーフレット
●名刺(2つ折り名刺)
●ニュースレター、ハガキ(DM)
●販促用プロフィールシート
いわゆる「紙もの」です。
キャッチコピーから全体の構成、文章作成まで。
多くはデザイナーさんと、イメージや方向性、文字数などの打ち合わせをして、連携しながら制作します。
実際に手にとることができ、一覧性や視認性も高く、質感が感じられる「紙」の可能性はまだまだ高いし、需要もあります。
文章をライターに頼む人は減ってきているかもしれませんが、「一緒に考えてほしい」「アドバイスがほしい」という方は多い感触です。
●プレスリリース
「プレスリリース」とは、おもにマスコミに向けて、取材のお願いや新サービスや新商品のお知らせをする文書のこと。
必ずしも記者さんに取り上げていただけるわけではありませんし、「広告」ではないので、自分の希望に沿って書いてもらえるものではありません。
社会的意義やニュース性の高い取り組みなどをされている場合は、マッチする場合があります。
プレスリリースを出したい方とお話ししながら、ときには文章だけでなく、図表や写真を織り交ぜた資料も一緒に制作していきます。
●地域情報誌、フリーペーパー
●広報誌(行政機関の季刊誌など)
●新聞別刷特集
多くは発行元の編集部や出版社からの依頼があり、企画趣旨に沿って取材・執筆します。
こういった案件が、一般的な「ライター」の印象として強いかもしれません。
編集部の方が、取材日時を調してくれて現地に向かうケースもあれば、取材対象者へのアポ取りや企画説明から行うケースもあります。
新聞別刷と呼ばれる特集版では、全体のページ内容企画や構成まで、執筆も含めてお願いされることもあります。
●郷土誌(市町村)
●各種記念誌(閉校記念誌、企業周年記念誌など)
●雑誌・ムック本・タウン誌
こちらも情報誌・広報誌と同様、発行元の編集部や出版社からの依頼があり、取材・執筆します。
ページ数が多いケースが多いので、携わる期間が年単位になるなど、長期にわたる場合もあります。
●文字/テープおこし
座談会記事などの場合、カメラマンや制作担当の方が音声のみ録音して、それをライターが後から聞いて原稿におこして記事を組む…という作業をすることがあります。
文字おこしアプリの精度も上がってはきていますが、余計な「え〜」「あ〜」などの言葉や司会のあいさつを省いたり、迷走のような雑談からでも意味の通じる文にするのは、最終的には「人」の力です。
特に方言がきついとアプリでは壊滅的ですしw、専門用語も的確に拾われることは困難です。
簡単そうに思えて、意外と時間と労力のかかる作業でもあるので、文章としての体裁を整えられるライターに発注がくることがあります。
校正・校閲系
●すべての制作物
●他者の書いた文章でご依頼のあったもの
●個人出版物
●すべての制作物
●他者の書いた文章で、ご依頼のあったもの
これはわたしの場合ですが、学生の頃から校正ルールを意識する環境にいたことと、新聞社系列のデザイン制作会社に勤めていたころに、発行物の担当として社内校正を担当していたことから、校正・校閲もお願いされることがあります。
他のライターさんが書いた原稿などの校正(誤字脱字や表記ゆれの統一)、校閲(文章の根拠はきちんとしているか、整合性はあるかなどのチェック)などに加えて、場合によってはリライトを合わせて行うこともあります。
他者の文章をチェックするという作業は、非常にセンシティブな面もあり、文章を書いて納品してきた経験があって初めてわかる点もあると感じます。
その点では、ライターだからできる仕事かもしれません。
いかがでしょうか?
ウェブ「以外」の案件だけでも、案外多様だと思いませんか?
さらに、これ以外にも「話す」「思考する」「相談にのる」という形のお仕事もあるのです。
「セミナー系」「ブレスト系」「コンサル系」については、別の記事でご紹介しますね。